足音

どこからともなく聞えてきたその足音は、ささやかなざわめきを残してあっという間に過ぎ去ってしまった。

いままでまったく気配を感じなかったというのに、いつのまに間近に迫っていた。

ほんの直前まで気付かずにいた。

なぜ気付かなかったのか。

過ぎ去った後では、それがとても不思議。

木々の色、流れる風、柔らかい陽光、どれもが彼らの名残。

少しずつ振りまいて、それらを心に落としていった彼らは一度も振り返らず、南へ旅立ってしまった。

待ち望んでいたのに。

焦がれていたのに。

でも、足音はもう聞えない。

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梅雨はいつもあっという間に通り過ぎる。

いつの間にかやってきて、いつの間にか過ぎ去って行く。

とめどなく溢れ出すその水滴をすくい取ることができずに、無残にも散っていく彼らをただ見守るしかできないでいる。

転がり落ちた水滴たちはお互いにぶつかり合い、手を取り合い、粉々に砕け散って星屑のように辺り一面に広がり、まばゆいばかりの輝きを放つ。

映したのは灰色の空。

喜びに謳う木々の緑。

木々で羽を休める鳥たちのため息。

地上にたどり着く直前に百花繚乱の傘たちに抱きすくめられて、一瞬宙に舞う。

再び落下し、大地の寝床で安息を噛み締める。

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夜行吐息

そっと吐いた息が螺旋状となって、地面に落ちてゆく。

先ほどから何度繰り返しているだろう。

夜空には薄雲が広がり、小さな光たちを次々と飲み込んで、月光もぼんやりと頼り気のないものになっている。

まるで私の心のように。

落ちた螺旋が砕け散って、部屋中に散らばっている。

ため息をつくと幸せが逃げると言うけれど、無意識に出てしまう。

ほら、月も星たちもため息をついている。

雲を追い払えないほどか細くて冷たい息だ。

彼らだってそんな時もある。

そう思うと、少し気が楽になった。

ありがとう。

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詩・色

のせる。のせる。のせる。

揺れるように、流れるように。

舞い落ちる花びらのように、留まることを知らない流水のように。

のせる。

ローズ、オレンジ、カーマイン、ターコイズブルー、コバルトグリーン、バイオレッド、バーントアンバー、ピュアレッド、レモンイエロー、アクアブルー。

ビリジャン、クリムソン、ターコイズブルー。

暗く、重い色も気品があり美しい。

ベージュやアイスグリーン、ペールピーチ。

軽やかな春を思わせる陽気な色も、心踊る。

真っ白な空間に色とりどりの花が咲く。

心のままに、筆のおもむくまま、花を落としてゆく。

何度も何度も、のせる。

のせる。

のせる。

少しずつ混ざり合った花たちは、やがて混沌に帰っていく。

全ての色を飲み込んで。

複雑に絡み合って、解けないほど難解にねじれて。

筆が止まる。

気がつくと、白い空はどこにもいなくなっていた。

広がるのは、落ちてきそうな重い雨雲。

降るといい。

勢いよく、どこまでも、何もかも押し流すほど力強く。

飲み込んだものを吐き出して。

その先にはきっと‥‥。

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詩・黄昏

黄金色。

見上げた空が、黄金色に染まる。

足元は、黄金色で埋め尽くされる。

自身を黄金色に染め上げ、力を振り絞り、風に乗せる。

小さな黄色たちは群れをつくり、輝きはじめる。

日の光を借りて、あらん限りの力を出して、黄金色に発色する。

輝きながら、

風に乗る。

風に舞う。

風に沈む。

吹かれて宙を駆け、日に溶ける。

溶けた光は闇に紛れ、街を彩る賑やかな灯りに姿を変える。

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